保険:パート3:請求管理

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2018年07月12日

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データサイエンス

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筆者:英国 World Programming シニアデータサイエンティスト Natasha Mashanovich



保険請求は「補償する損失もしくはポリシーイベントに対する保険会社の補償への公式な請求である」(ソース: www.investopedia.com)。一度始まると、請求は2つの可能性のある結果の1つとともに通常複雑な行程をたどります。- 請求は受け付けられ支払われる、もしくは却下のいずれかになります。請求処理は典型的には保険会社へ連絡し、請求者の調査が始まり、契約の補償を確認、損害を評価して、補償の支払いが手配されます。

UK 保険産業の数字には目を見張るものがあります。一日平均で自動車保険請求には 33百万ポンド、財産保険請求には13百万ポンド、ポリシープロテクションに12百50万ポンド、旅行請求には百万ポンド支払われており、傷害請求の平均は1万ポンドに近く、98%近くの自動車請求が受理されており、年間の不正請求の費用は13億ポンドです。このような巨大な請求費用は引受損失となり得、これはこの24年間で引受利益が1度しか出ていない自動車保険では特に顕著です。(ソース: www.abi.org.uk, 2017)

保険会社が高い運用費用や継続的に高まっている顧客の要求、不正請求の増加、長期におよぶ処理による顧客の不満足度などを含めた数々の課題に直面していることは明らかです。さらに、高い IT コストや変更要求の遅れ、IT やサードパーティーの不十分な統合は運用コストを増加させ最終的には引受損失につながります。

請求処理の改善や不正抑制防止に対する現在行われている努力にかかわらず、時間とリソース両方の見地から、より良い顧客サービスや顧客体験、運用改善や請求のより効果的な処理に焦点を置いた大幅な改善を考える余地があります。

このような改善を行うには例えば、出来るだけシステム統合を行い、高度な予測分析や GPS での車の追跡、テレマティクス機器、身体活動追跡や画像認識などのようなアンビエントコンピューティングを盛り込んでいかなくてはなりません。機械学習と人工知能はレトロスペクティブ分析を深め、決定が主観ではなくデータの情報に基づいたものであることを確実にします。

InsurTech イノベーションでの重要な分野の1つは初期損害通知(FNOL)時のサポートです。FNOL は保険請求処理における最初のステップであり、これは請求が不正である可能性や、契約補償、損失見積もりなどを含む数々の繊細な課題や問題に請求調査人が直面するため、しばしば処理のボトルネックと見なされます。これらの問題を公正で効果的に取り扱うことができないと顧客との関係に傷がつくこともあり得ます。

FNOL 意思決定支援システムは、最適なリソースを使用して、この複雑で時間的制約のある意思決定プロセスを支援することができます。FNOL のエコシステムは通常、様々な予測モデルや人工知能ソフトウェア、ソーシャルネットワークや第三者のネットワーク、アンビエントインテリジェンスなどを利用したリアルタイムのソリューションです。

自動車保険で典型的な予測モデルの仕様が図1で示されています。モデルはRESTful web サービスとしてスコアリングエンジン上に展開されフロントエンドへ接続されています。初期損害通知の間にリアルタイムにスコアが付けられ同時にモデルのスコアがダッシュボードで視覚化されます(図2)。


図1。リアルタイムの FNOL 意思決定支援ツール

予測モデルの選択は契約タイプや保険業者の好みによります。自動車保険モデルは通常、車両の廃車もしくは修理の予測、保険給付支払準備金額の見積もりの予測をより的確にする傷害の重症度スコア予測、請求コストの総額を見積もる給付支払金総額の予測やまた、不正請求の可能性を知らせる不正モデルを含みます。さらに、不正モデルは既存の会社の不正に対する技法を使用して設計し、一連のモデルと不正インジケーターからなる複合ソリューションとして実装することもできます。


図2。FNOL 顧客支援ダッシュボード(プロトタイプ)

直観的なダッシュボードなどに代表されるように、 FNOL のソリューションは請求調査人のよりよいリソースの割り当てやタスクの優先順位などにおいて手すりのような役割を果たします。早期支払い額の申し出などダッシュボードのインジケーターに基づく意思決定は、さもなければ負担になってきた不必要な事務費用を著しくカットすることができます。

動的なアンケートは、ダッシュボードのスコアボード(つまりモデルのアウトプット)に基づいたオーダーメードの方策を作ることによって、請求処理を管理するために実装することができます。例えば、不正ゲージが「赤く点滅」になっていれば請求者を調査するためにデーターベースから異なる組み合わせの質問が引き出されます。一方で「緑で安定した」ライトであれば追加の質問を飛ばして請求処理を早め、最終的には顧客満足を高めることになります。

全体的な傾向が顧客中心サービスに向かっていることにより、最新のInsurTech イノベーションは、セルフサービスのソリューションが、いつでもどこででも使用できることに焦点を置いています。最新の FNOL ツールは自動化された保険エージェント(claimbots として知られている)を利用し、しばしば人が行うよりも素早く会話を行い、情報を交換し、査定をしたり、レコメンドを行ったりします。

このツールはもう数年前から使用されていますが、FNOL 意思決定支援ツールの可能性は十分に引き出されていません。わずかな保険業者が非常にシンプルな形態でこのツールを利用しています(図2)。市場調査では保険業者は、 AI 技術を適用したいと考えていますが、実装や統合のコストとデータのセキュリティーと課せられる統制規則が、その試みを抑制する主な理由となってきました。

請求をより効率的にする必要性を考えると、このような支援ツールの必然性はより明らかです。明るいとしてニュースは、小さな一歩が認められ、それが少しずつ安定して優れた請求管理の意思決定支援エコシステムとなり得るということです。