保険:パート2- 適正で公正でありかつ競争力の高い保険料。

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2018年07月05日

カテゴリー

データサイエンス

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筆者:英国 World Programming シニアデータサイエンティスト Natasha Mashanovich



「どの保険か?」というのが潜在顧客が魅力的な保険見積を探そうとしているときの最初の疑問です。競争力の激しい UK の保険市場(図1)では、保険会社はオーダーメイドの料金設定の手法を開発して、まず第1に保険料金が適切であり、予想される損害と負担価格をカバーすることを確実にしなければなりません。第2に、保険料が予想される損害と費用に密接に関連付けられるよう保険契約を公正な方法で設定しなければなりません。第3に、新規顧客を魅力し既存顧客を維持するために保険料を競争力のあるものにしなければなりません。


図1。競争力の激しい UK の保険市場

料率設定もしくはリスクベースの価格設定が保険の価格設定では鍵となる要素です。現実の価格設定の技術と手法は保険の種類や有効なデータ、様々な規制やマーケティング、運用などの制約に強く依存します。そしてさらに、選択したモデリング技法は技術とデータサイエンスの進歩にあわせて変化し続けます。

技法は線形や加法、混合モデルのような様々な統計手法からランダムフォレストや勾配ブースティング、ニューラルネットワークもしくはサポートベクターマシンなどのような機械学習モデルの拡張セットまで及びます。統計モデルは通常多くの仮定に基づいて、方程式の形にデータを適合させることに焦点を置いています。これに対して機械学習手法ではデータについての仮定は少なく、アルゴリズムの構築を通して学習することに焦点を置いています。豊富な分析環境の中で最適な手法を見つけることは難しいことが多く、モデルの精度や時間経過によるモデルの安定性、ビジネス上の制限、モデルの展開や実装に必要な DevOps の資源、モデル応答時間などのような多様な面を考慮しなければなりません。

このようなモデルの多様性にもかかわらず、一般化線形モデル(GLM)が保険業界ではデファクトスタンダードとなっています。機械学習手法はしばしば予測作業でより良い働きをしますが、GLM は結果をより簡単に解釈し理解できるため、その他のモデリング技術よりも人気を得ています。このモデルは予測因子とその結果に直線的な関係があると前提し、格付け因子を選択するときに操作が容易になります。さらに GLM ベースの格付けアルゴリズム(表 1)は実装が容易で、実行が早く、保険数理の実績と規制上や運営上、マーケティング上などの様々な制約の実装を統合するための柔軟性があります。

ベースレート£500格付けアルゴリズム
格付け要因レベル相関性純保険料 = ベースレート
販売区域ゾーン13.81*販売区域ゾーン
21.91
30.71
41.00
車齢12.38*車齢
21.44
31.00
エンジン性能10.37* エンジン性能
20.72
31.00
41.26
51.50
62.96
74.41
ボーナス10.58*ボーナス
20.79
31.00

表1。GLM ベースの格付けの相関と格付けアルゴリズム(図)

料率設定の過程の結果は予測された技術上の金額(例えば純保険料)であり請求申請の可能性と一致します。正確にモデルが作成されれば、予期する損失をカバーするのに適正な価格を提示するはずです。この技術上の価格は、保険引受利益と同様に、取得原価や手数料や税金を含めた他の保険引受費用を含めるよう調整されます。

従来の保険料金価格設定の手法ではリスクベースの価格のみに焦点を当て、競争相手の価格は無視します。現在の情勢ではこの手法は最適とは言えず、多くの保険会社はより洗練された価格設定の手法を取るようになってきています。World Programming では(図 2)で示されているような保険価格設定の全体的アプローチを提唱させていただきます。海へのダイビングを象徴的に参照すると、新しい(データの)生物を発見する探索の中で(データ)の海へ深く潜れば潜るほど、新しく価値のある(ビジネスの)宝石をつかみ取ることに成功するということです。

図2。保険価格設定過程

この視点では保険料金は、単独のリスクベースの価格設定に基づいており、これは浅瀬で探索するようなもので、有効なデータの可能性を最大にしていません。料率設定価格は適切な価格を確実にしますが、必ずしも価格競争力があるわけではありません。このため、価格設定の過程は顧客セグメンテーションや競争相手の価格、価格最適化など付加的な要素を含んでいなければなりません。

顧客セグメンテーションは、ある顧客が値上げや値下げの対象になるべきかどうかを決定する重要なステップとなります。さらに、これは保険料金の値引きが最もリスクの低い顧客にのみ申し出されるどうかの再確認の役目も果たします。セグメンテーションは、少数のビジネスルールに基づいて非常に単純なものとなり得るか、請求の確率などの傾向モデルまたは加入資格によってセグメントを作成するクラスタリングモデルなどのようなより洗練されたものとなり得ます。

競争力の高い価格とは、リスクベースの保険料を競争相手の利率に対して調整するということです。取り組むマーケティングによって、需要モデルは競争市場をとらえる必要があります。つまり顧客獲得のためにはコンバージョンモデル、もしくは顧客維持のためにはチャーンモデルなどです。これら傾向モデルを構築するために、どの2値分類器が使用されるのかは求められるモデルパフォーマンスやモデル展開や実装の容易さなど様々な要因によります。さらにコンバージョンモデルは通常リアルタイムで実行されているため、モデル手法決定時にモデルスコアリングのスピードが重要な要因となります。

価格設定過程の最終ステップは、価格の最適化であり通常、価格の柔軟性と呼ばれまた、これは個人レベルでの価格の許容性についての評価です。このステップは、利益を最大限にする(図3の青い線)適正な競争モデル(図3の黄色い線)が価格を設定しているかどうかを確実にするという付加的な利益があります。モデルの最適化は通常仮定のシナリオにより異なる価格シミュレーションを必要とし、このため最適化の制約のもとで最大限の利益を引き出すことができます。

図3。価格最適化の問題(ソース:www.casact.org)

図4は、リスクベースの価格の最大20%までの値下げを提供するモデル最適化の図です。背景にある需要モデルによって、保険料の値引きの範囲は値引き無しから最大20%までのばらつきがあります。

図4。価格最適化の結果(図)

一度、最適化の筋書きが選択されると、完成した価格設定ソリューションの展開や実装、テストの準備が整ったことになります。これにはリスクベースのモデルや需要モデル、最適化モデルが含まれています。完成したモデル一式は単独の格付けエンジンに実装するか、複数のエンジンに渡ってホストすることができます。厳格なテスト過程の後に、価格付けソリューションはレースで競う準備が整います。

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