投稿日
2018年06月25日カテゴリー
データサイエンス共有
筆者:英国 World Programming シニアデータサイエンティスト Natasha Mashanovich
保険とは『指定した期間中に特定のイベントが起こったら補償がなされるという未来の約束です』(ソース:www.casact.org)売れる前にその費用が分かっている様々な商品とは違い、保険は購入時に保険契約の価格が分からないため全く異なる「怪物」と言えます。このため、保険商品の販売は大きな経済的リスクを伴います。
最も単純な算数表記では、商品の価格はコストと利益の合計によって定義されます。保険業界の第一の目標と大き挑戦は商品のコストを正確に見積もることです。長年にわたり、保険会社はコストを計算するための様々なツールや手法、数学的モデルを開発してきました。ビッグデータ革命が、データ処理や予測分析、人工知能の進化をともないこの開発努力をより実現可能なものにしました。それにも関わらず、2015年に UK の自動車保険市場が1994年以来初めて、保険引受利益を出したという事実は保険が非常に努力を要するビジネス分野であるということを示しています(ソース: abi.org.uk)。
Association of British Insurers (ABI) の最新のUK Insurance & Long-term Savings 年次レポートで示されている重要な事実が、UK の経済力にとっての保険産業の重要性を認めています。UK の保険産業はヨーロッパ最大であり、2016年に出た総収益3000億ポンドの保険料は世界で4番目の大きさです。UK には900以上の認可された一般保険会社があり、その従業員は300,000人を超えています。収入保険料の値は継続的に成長しており、車両と家財保険が最多商品です。75%以上の UK の家庭で車両や家財保険どちらか一方もしくは両方を利用しています。総収益が何百億になるにも関わらず、わずかな利ざやと800億ポンドの不正請求が原因で自動車保険では200億の保険引受損益が出ました。
図1。UK 保険産業の重要な事実(ソース:www.abi.org.uk, 2017)
保険市場での最も重要な目標は、このため、適正で公正でありかつ競争力の高い保険料を設定するということです。顧客中心的なアプローチと共に、保険価格体系は容易に理解することができ、長期間安定したレートを提供し、経済動向に機敏で、最終的に手頃な価格を提供できるよう損益管理を行えるようになっている必要があります。これらは実行が難しく相反する要件であり、保険会社へ大きな経済負担をかけます。
保険料金を提示するために、保険会社は、カスタマージャーニー(図2)を通して多くの未知事項例えば、顧客のリスクの高さ、その顧客に値引きの申し出をするべきか、値引額はいくらにするか、さらに顧客を獲得する方法、既存の顧客の維持方法、顧客が保険請求する可能性の高さとその総請求額の予測が可能かどうか、不正顧客を検知できるか、どのように他の商品を顧客に購入してもらうか等に対する答えを見つけようとします。
図2。カスタマージャーニー全体を通した顧客との対話
保険契約の適正さや公正さ、競争力の高さを見積もることは、上記の疑問に答え、顧客との長期取引を確かにする鍵となります。このため、保険の価格設定(しばしば料率設定とも言われる)は保険産業とそれにおけるデータサイエンス技術の重要な原動力となっています。適正・公正・高競争力な保険価格設定のために最も重要な役割を担っている2つの保険概念は、価格設定と請求です。不正検知に支えられているこれらの概念は保険技術革新の急速な前進に寄与する重要な分析要素です(図 3)。
図3。保険分析フレームワーク
表 1は、データサイエンスが、これら3つの保険概念にまたがってどのように使用されるかまた、顧客ライフサイクルにおいて異なるステージでの様々なビジネスの試みの際にどのように支援できるのかを図示しています。
| 区分 | 試み | 分析ソリューション | 典型的モデリング手法 | ビジネス上の利益 |
|---|---|---|---|---|
| 価格設定 | 販売時にはその保険契約の最終コストが不明である | 顧客レベルの料率設定(リスクベースの価格設定) | 一般化線形モデル(例えば、プログラミング言語の SAS の GENMOD プロシジャ) | 適正で公正な価格設定つまり、保険料 = 損益 + 利益 |
| 競争市場とその力学を理解する | 市場ベースの価格設定モデル(コンバージョン、需要、リテンションモデルを含む) | 傾向モデル | 顧客基盤と競争上の優位性を拡大 | |
| 顧客の価値は? | 顧客寿命の価値 | 生存分析、セグメンテーション、傾向モデル | 最適化したマーケティングキャンペーン | |
| 顧客の価格設定への許容性は? | 価格弾力性 | 最適化 | 利益の最大化 | |
| 請求 | 運営やITにかかる高いコストを削減し、顧客満足を維持する | 初期損害発生通知を含む請求管理のフレームワーク | 傷害や請求コスト、損失処理を含めた傾向や回帰モデルを使用した全体論的アプローチ | リアルタイムな意思決定や収益化 |
| 不正検出 | 申請や請求の不正検出 | 不正検出フレームワーク | 傾向モデルや異常検出、不正規則、ブラックリスト、リンク分析などを使用した全体論的アプローチ | 損失を最小化する |
表1。InsureTech のためのデータサイエンス活用
保険の予測モデルの開発や実装、利用の成功は、選択した分析プラットフォームに強く依存しており、このプラットフォームは、ETL機能(抽出、変換、読み込み)、データの操作や視覚化、準備、モデルの構築や検証、モデルのデプロイメントやテスト、運用、監視などを含む非常に多様な要求を満たさなければなりません。保険会社はしばしばコストを正当化するために商用とオープンソースのツールを混ぜて選択します。しかしこの選択には、統合過程で時間とリソースを消費してしまい、最適とはいえないソリューションになる可能性もあるため、注意を必要とします。
図4。保険のための WPS Analytics プラットフォーム