クレジットスコアリング:パート8 -信用リスク戦略

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2017年11月08日

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データサイエンス

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筆者:英国 World Programming シニアデータサイエンティスト Natasha Mashanovich

「行動が全ての成功の元だ」(Pablo Picaso)。ガートナーの analytic value escalator(分析値のエスカレーター)は4つの異なる種類の分析を認識しています。それらは記述的、診断的、予測的、処方的分析です。これらは難易度と事業価値の順番で並んでいます。処方的分析は最も複雑ですが最も優れた値を得ることができ、このエスカレーターの頂点にあります。処方的分析では次の鍵となる質問に答えて、行動という形式でのビジネス成功のためのレシピを得ることができます。「どのようにすれば起こるのか?」与信リスクの分野ではこの質問への答えは信用リスク手法の中で見つかります。

信用リスク手法はスコアカード開発の後に行い、スコアカードの実装前に行う処理です。これで顧客のスコアをどのように解釈し、そしてそのスコアに対してどのような事が実行可能な処理として適しているかを知ることができます。実装するとしたら次の方法が優れています。(1)顧客基盤を拡大する、(2)信用リスクを減らす、(3)利益を最大限にする

手法の分析と仮定を何度も繰り返す前に、結果としてこれらの分析を形作っている明確な事業目的の認識とビジネスプロセスへの理解を行うことが重要です。最も一般的で簡単な信用リスク手法の形態は、1次元のカットオフに基づいた承認もしくは却下の決定です。与信の承認のための最小スコアであるカットオフ水準は、値が1つに決まっている固定カットオフであったり、もしくは無条件承認や条件付き承認または却下など複数の処理とともに調節可能な値を持つこもできます。しばしば貸主側は、顧客セグメントで異なるカットオフ水準を発見するために、セグメンテーション手法を使用します。セグメンテーションは地域や購買層、流通経路、前回却下された顧客など多様な要因によって実行に移されます。例えば、手法セグメンテーションは顧客セグメントと同じ悪い率に基づくことができたり、より優れたセグメントのためにより高い承認率から利益を得たり、セグメント全体で同じ承認率を保ったりすることで、結果としてより良いセグメントで不良債権をさらに低く抑えることができます。

事業目的全体に基づくカットオフ水準。例えば、目的が80%の承認率を維持することに基づいている場合、後ろ向き解析はカットオフ値を320に設定するかもしれませんが、もし目的が最大6%の債務不履行の率に基づくのであれば、手法にさらに制限が掛かりカットオフ水準は360まで増加するかもしれません。もし手法が純利益もしくは純損益の計測に基づいている場合、カットオフスコアは図1の例の通り440にセットする必要があります。


図1。異なるカットオフ手法

表1は承認率や債務不履行率、利益額のようなスコアカードのカットオフ水準に情報を与える重要業績評価指標(KPI)がどのように異なるかを示しています。社内の各部門には、しばしば衝突する異なる目標があります。例えば、信用リスク部門は債務不履行率や不良債権の数を減らす目的であるのに対して、マーケティング部門では顧客基盤を広げるためにカットオフ水準を引き上げる要求を出すかも知れません。妥協案として、同じ悪い率で、承認数を増やすもしくは同じ承認率で悪い率の減少を導く新しいスコアカードを設計することがあります。承認数を増やすことは、市場シェアを拡大したり全体の収益をさらに大きくするためには良い判断です。悪い率を減少させるという方針は、経済変動期間中により適しています。

カットオフスコア承認率(KPI)債務不履行率(KPI)利益(KPI)手法
32080%10%610K競争優位、与信需要の削減
36070%6%750K景気減速、経済動向、「悪い」率の増加
44049%1%850K利益ベースの手法、損益分岐収益

表1。異なる KPI から情報を得るスコアカードのカットオフ水準

より洗練された信用リスク手法は複数のカットオフ水準を持っていたり、内部適用スコアとビューロースコアなどの2つ以上のクレジットスコアを結合していたりします。手法は顧客維持や回答率もしくは顧客生涯価値などの他の予測モデルをしばしば含んでいます。ポリシーや当局規則と結びつけられたこれらの行動スコアと事業 KPI は、予測分析とビジネスルールの最良の利点を引き出します。


図2。多重処理のための複数のカットオフ水準

利率や与信限度、返済期間などの製品提供に合わせるために、リスクベースの価格付けにはさらにスコアが利用される場合があります。リスクベースの価格付け作業は、利益もしくは損益分析に基づいた1次元の複数カットオフ処理(例えば、低い限度の受け入れ)から、与信限度や利率を決めるための行動スコアと未払い残高など2つの次元を結合したマトリックス手法まで様々な形態をとります。マトリックス手法は業務コストを管理するための単純な最適化にも取り入れることができます。例えば、スコアと回答率の2つの予測モデルを組み合わせると、マーケティング部門はリスクが低くかつ、提案にたいして高い回答率のある顧客に焦点を当てることができます。


図3。マトリックス手法を使用したリスクベースの価格付け

図4。維持手法とリスクセグメンテーション手法

簡素過ぎる手法を使用するのは危険です。その手法は例えば、危険を伴っているが誠実であるもしくは高い利益を上げられる顧客を却下してしまう可能性があります。顧客生涯価値(CLV)モデルでは価値の高いセグメントを発見できます。ただし貸主は、判断が非常に難しく複雑である CLV を使用することに積極的ではないことがあります。そのような状況では、それに応じた徹底したインサイト分析が変数セグメントの発見と手法の調整の助けになるかも知れません。